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日本交渉協会常務理事でありナカノ株式会社代表取締役の窪田恭史氏をゲストに迎え、「孫子の兵法で読む交渉学」シリーズ第10回をお届けします。テーマは引き続き『虚実篇』。今回は「交渉にどう活かすか」をさらに深め、アンカリング・譲歩・情報収集という3つの視点から整理しました。

「最初に数字を提示するかどうか」で交渉の流れが変わる。アンカリング効果の実例から始まり、譲歩の幅を徐々に狭める戦略、中国戦国時代の「馬陵の戦い」の逸話へとつながります。そして、情報を制するものが交渉を制することを、孫子の用間篇や「彼を知り己を知れば百戦危うからず」の言葉を引きながら解説。キッシンジャーのベトナム和平交渉やIBMによるロータス社買収など、歴史と現代事例を交えて「情報こそ交渉の命綱」であることを伝えています。

◎窪田恭史氏のご経歴

日本交渉協会 常務理事/燮(やわらぎ)会 幹事

ナカノ株式会社 代表取締役

日本古着リサイクル輸出組合 理事長

表情分析、FACS認定コーダー

日本筆跡心理学協会 筆跡アドバイザーマスター

早稲田大学政治経済学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)でのコンサル業務を経てナカノ株式会社に入社、2024年より現職。「交渉分析」理論の日本への導入にも尽力。

【TODAY’S TOPICS】

◎虚実篇を交渉に活かすための3つの視点

① アンカリング効果

 ・最初に提示される数字が基準となり、相手の判断を左右する。

 ・「提示は先手か後手か」を状況に応じて選択する重要性。

 ・実体験エピソード(インドでの値段交渉)から見える心理作用。

② 譲歩の原則 ― 3つの鉄則

 1. いきなり大幅な譲歩をしない。

 2. 少しずつ幅を狭めるように譲歩する。

 3. 金額は「端数」で提示することで説得力を高める。(※端数効果)

事例紹介:馬陵の戦いに学ぶ「虚を作る」戦略

 ・兵力が減っていると錯覚させて相手を誘い込み、伏兵で逆転する孫臏の戦略。

 ・交渉でも、譲歩を小さく積み重ねることで「もう余地がない」と相手に思わせ、実際には主導権を握る。

③ 情報収集と意思決定のプロセス

 ・相手の立場・利害・背後関係を把握することが交渉設計の前提。

 ・孫子が「用間篇」でスパイの重要性を説いたように、情報は交渉の命綱。

事例紹介: 歴史と現代事例に見る情報戦

 ・キッシンジャーがベトナム和平交渉で、ソ連や中国まで視野に入れた圧力設計。

 ・IBMがロータス社買収で、経営陣の対立や株主心理を突き、有利に交渉を進めた事例。

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お聞きいただきありがとうございました。交渉学についてさらに詳しく知りたい方は、⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠「交渉アナリスト」⁠の公式サイト⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠⁠もぜひご覧ください。