「交渉学教科書」シリーズに続く新企画。今回は「史記」を手がかりに、歴史の名場面から交渉の本質を読み解きます。初回は、楚漢戦争の帰趨を左右した「鴻門の会」に入る前提整理。司馬遷が「史記」を編み上げるに至った背景、秦末の混乱、そして項羽と劉邦の性格対比が、のちの交渉の運命をどう形づくったのかを押さえます。
【TODAY’S TOPICS】
◎企画のねらい
・歴史エピソードから「交渉の型」を抽出
・物語→要因→原理の順に分解して実務に持ち帰る
◎『史記』と司馬遷の視座
・父の遺志を継ぎ、宮刑を経ても編纂を続けた執念
・人物中心の叙述=意思決定と関係性にフォーカス
◎秦の統一と崩壊(前提整理)
・法家一辺倒+苛政で「恐怖の秩序」に依存
・情報遮断と現場乖離→反乱の連鎖へ
・短命政権の教訓「支配はできても合意は育たない」
◎楚漢の幕開けと二人のキャラ設計
・項羽=即断即決・名誉重視・威信で押す
・劉邦=目的可変・関係重視・逃げの設計も武器
→同じ目的でも「何を重視するかの優先順位」と「交渉スタイル」が真逆
◎始皇帝を前にした「ひと言」の読み方
・項羽「取って代わるべき」=衝動と覇気の自己開示
・劉邦「男子たるもの、かくあるべし」=抱負を示しつつ曖昧さを残す
→短い発話ににじむ、合意形成の作法の差
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