今回も日本交渉協会常務理事、ナカノ株式会社代表取締役の窪田恭史氏をお呼びして、「孫子で読む交渉学」をテーマにお話いただきました。
◎窪田恭史氏のご経歴
日本交渉協会 常務理事/燮(やわらぎ)会 幹事
ナカノ株式会社 代表取締役
日本古着リサイクル輸出組合 理事長
表情分析、FACS認定コーダー
日本筆跡心理学協会 筆跡アドバイザーマスター
早稲田大学政治経済学部卒
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)におけるコンサルティングおよび研修講師業務を経て、衣類のリサイクルを90年手がけるナカノ株式会社に入社。2024年より代表取締役社長に就任。
2012年、交渉アナリスト1級取得。
日本交渉協会燮会幹事として、交渉理論研究を担当。
「交渉分析」という理論分野を日本に紹介し、交渉アナリスト・ニュースレターにて連載中。
-----------
【TODAY’S TOPICS】
◎ 謀攻篇の概要
・前回の「作戦篇」に引き続き、戦いの基本原則は「戦わずして勝つ」こと
・敵の意図を事前に見抜き、敵が行動を起こす前にそれを抑えてしまうというのが理想
・やむを得ず戦う場合、可能な限り消耗を少なくする
・最も愚策なのは、力任せの城攻め
⇒戦力を損なうことなく戦果をあげるのが謀攻の原則
◎武力で交戦しなければならない場合
・一般的に攻撃側は守備側の3倍の戦力が必要
・10倍の戦力があれば、敵を包囲する
・5倍の戦力があれば、力でねじ伏せる
・2倍程度の戦力の場合、敵を分断しそれぞれを撃破
・互角の戦力の場合、守りを固め計略を用いる
・劣勢の場合、戦力温存し極力交戦を避ける
・勝ち目がない場合は、戦ってはいけない
◎君主が現場に悪影響を及ぼす君主の誤った行動 3つ
・戦場の状況がわからないのに、進軍・退却の命令をすること
・軍内の状況を把握していないにも関わらず、軍政に干渉すること
・現場の軍の任命に干渉すること
◎勝つ軍の5つの条件
・戦うべき時と戦うべきでない時を知っている
・戦力に応じた戦略を考えられる
・上下の意思統一がなされている
・準備万全で敵の不備を突ける
・有能な将帥が存在し、君主が干渉しない
◎交渉との関連性
戦わずして勝つ → 交渉の席につく前に有利な状況をつくる
・シャーリン・バーシェフスキー:交渉戦術は最後の仕上げにすぎない
・ジェームズ・セベニウス「逆方向マッピング」:最終目的から遡り、交渉の順序を設計
戦力差と交渉
・圧倒的な交渉力 → 強制力で相手を動かせる
・対等な交渉 → メディエーション(調停)が有効
・アダム・カヘン:「統合型交渉が必ずしも正解とは限らない」
内部交渉(レベル2交渉)
・交渉者には、所属組織との交渉(内部調整)も必要
・相手の組織内交渉を助けることで、より良い合意に導ける
例:冷戦後のドイツ再統一交渉における、ブッシュ大統領のゴルバチョフの立場を守る配慮
----------
お聞きいただきありがとうございました。
交渉学についてより詳しい内容をお知りになりたい方は、
「交渉アナリスト」のサイトをご覧ください。