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今回も日本交渉協会常務理事、ナカノ株式会社代表取締役の窪田恭史氏をお招きし、「前インドネシア大統領ジョコ・ウィドド氏による統合型交渉事例」をお話いただきました。

 

◎窪田恭史氏のご経歴

日本交渉協会 常務理事/燮(やわらぎ)会 幹事

ナカノ株式会社 代表取締役

日本古着リサイクル輸出組合 理事長

表情分析、FACS認定コーダー

日本筆跡心理学協会 筆跡アドバイザーマスター

早稲田大学政治経済学部卒

 

アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)におけるコンサルティングおよび研修講師業務を経て、衣類のリサイクルを90年手がけるナカノ株式会社に入社。2024年より代表取締役社長に就任。

2012年、交渉アナリスト1級取得。

日本交渉協会燮会幹事として、交渉理論研究を担当。

「交渉分析」という理論分野を日本に紹介し、交渉アナリスト・ニュースレターにて連載中。

 

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【TODAY’S TOPICS】

統合型交渉の実践事例:スラカルタ市長 ジョコ・ヴィドド氏の統合型交渉

◎背景と課題

2010年頃、独立記念塔広場で違法に営業する露天商が問題に。

他都市では強制排除を図り、暴動へと発展する例もあった。

スラカルタ市長ジョコ・ヴィドドは、対立を避けた交渉による解決を試みた。

◎プロセス① 問題と立場の明確化

・市の立場「露天商に新市場へ移転してほしい」

・露天商の立場「現在地での営業を継続したい」

◎プロセス② 利害関心の明確化

・市の利害関心「広場の秩序回復と市民の憩いの場としての整備」

・露天商の利害関心「新市場へのアクセス困難/移転による客離れ・収入現象への恐れ」

・露天商の活力を都市経済に活かす意図もあり、市長は対話を重視した。

 7ヶ月間で54回の食事会を兼ねた会合を開催し、特に前半は傾聴に集中。

 交渉相手である露天商の不安や希望を丁寧に聴取。

・対話から見出された共通の利害関心「スラカルタ市をよくすること」

◎プロセス③選択肢の明確化

ウィドド市長は、お互いの利害関心を満たす選択肢を提案

・露天商が商売をする権利を法律で保護し、祭事的なイベントとして演出

※露天商の潜在的な利害関心「自己重要感」(ウィリアム・ジェームズ)を満たした

プロセス④選択肢の評価・選択

・「インフラの整備」「賃貸料の徴収」「新市場の宣伝」「法的保護」「負のイメージの払拭」の5つからなる合意案を提示

・露天商は合意したばかりでなく、自発的に移転していった

結果・新市場移転後、露天商たちの収入は4~10倍に増加・独立記念広場の秩序も回復し、露天商合法化により市の税収も大幅に増加。※78億ルピア(2007年)→192億ルピア(2011年)

※今回の事例の参考文献Anggraeni Permatasari,Utomo Sarjono Putro,Shimaditya Nuraeni (2014) "Strategic Analysis Relocating Street Vendor through 3D Negotiation Case Study: Street Vendor Surakarta, Indonesia", Procedia - Social and Behavioral Sciences

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お聞きいただきありがとうございました。交渉学についてより詳しい内容をお知りになりたい方は、⁠⁠⁠⁠⁠「交渉アナリスト」のサイト⁠⁠⁠⁠⁠をご覧ください。