今回も、日本交渉協会常務理事でありナカノ株式会社代表取締役の窪田恭史さんをゲストにお迎えし、「孫子の兵法で読む交渉学」シリーズの第7回をお届けします。テーマは『勢篇』その2。「正(せい)と奇(き)」の戦術概念をもとに、分配型交渉で用いられる代表的なテクニックを解説いただきました。
さらに、交渉において極めて重要な「タイミング」についても、日常のたとえ話を交えてわかりやすくご説明いただいています。
◎窪田恭史氏のご経歴
日本交渉協会 常務理事/燮(やわらぎ)会 幹事
ナカノ株式会社 代表取締役
日本古着リサイクル輸出組合 理事長
表情分析、FACS認定コーダー
日本筆跡心理学協会 筆跡アドバイザーマスター
早稲田大学政治経済学部卒
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)におけるコンサルティングおよび研修講師業務を経て、衣類のリサイクルを90年手がけるナカノ株式会社に入社。2024年より代表取締役社長に就任。
2012年、交渉アナリスト1級取得。
日本交渉協会燮会幹事として、交渉理論研究を担当。
「交渉分析」という理論分野を日本に紹介し、交渉アナリスト・ニュースレターにて連載中。
【TODAY’S TOPICS】
◎「正と奇、虚」の観点で見る分配型交渉の戦術
1.立場固定戦術
「奇」:自分の立場・「正」:相手の譲歩結果
2.極端な要求
「奇」:極端な要求・「正」:留保点に近づけた相手の要求
3.ドア・イン・ザ・フェイス
「奇」:断られる可能性の高い最初の要求・「正」:2番目の要求
「虚」:相手に生じた返報性
4.善玉・悪玉戦術
「奇」:悪玉による理不尽な要求・「正」:善玉による妥当な要求
5.フット・イン・ザ・ドア
「奇」:最初に提示する小さな要求・「正」:最後の最も大きな要求
「虚」:一貫性のある人間として見られたい心理
6.かじり戦術
「虚」:交渉を早く終わらせたい気持ち
7.おとり戦術(ショッピングリスト戦術)
「奇」:重要だと偽った重要性の低い項目・「正」:重要な項目における大幅な譲歩
8.口車戦術
「奇」:相手が判断できない程大量の情報提示や、専門用語を駆使した複雑な話
「虚」:早く高い認知負荷から逃れたい心理
9.時間のプレッシャー戦術
「虚」:制限時間の設定により、相手に生まれる圧力
◎交渉における「タイミング」の力
・交渉すべきタイミング:自分の交渉力が高いとき・相手に受け入れる用意があるとき
例)家庭内でのお小遣い交渉
・最適なタイミングを測ろうとするあまり、チャンスそのものを逃してしまうのも問題
例)コロナ禍におけるマスク需給の見極め
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お聞きいただきありがとうございました。交渉学についてより詳しい内容をお知りになりたい方は、「交渉アナリスト」のサイトをご覧ください。