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令和8年1月30日に開催された中央社会保険医療協議会 総会(第646回)で、令和6年度における保険医療機関等の指導・監査等の実施状況が報告されました。この報告は、保険診療の適正化に向けた取り組みの年次実績をまとめたものです。本稿では、この報告の要点を解説します。

令和6年度の実施状況には、3つの注目すべき動きがありました。第一に、個別指導の件数が前年度比1,030件増の2,494件と大幅に増加しました。第二に、指定取消処分(取消相当を含む)が23件となり、歯科領域が14件と6割を占めています。第三に、返還金額の総額は約48億5千万円で、前年度から約2億3千万円増加しました。

指導の実施状況:個別指導が前年度比7割増

令和6年度の指導実施状況で最も目立つ変化は、個別指導件数の大幅な増加です。以下では、指導の3類型(個別指導、新規個別指導、集団的個別指導)ごとに、実施状況を説明します。

個別指導は2,494件で、前年度の1,464件から1,030件増加しました。科別の内訳は、医科894件、歯科791件、薬局809件です。この増加率は約70%にのぼり、5年間の推移を見ても令和6年度の件数は突出しています。令和2年度が1,797件、令和3年度が1,050件、令和4年度が1,505件、令和5年度が1,464件であったことからも、令和6年度の増加幅の大きさがわかります。

新規個別指導は5,989件で、前年度から587件減少しました。科別の内訳は、医科2,599件、歯科1,292件、薬局2,098件です。新規個別指導は新たに保険医療機関等の指定を受けた施設を対象とするため、件数の増減は新規開設数に連動する傾向があります。

集団的個別指導は15,506件でした。科別の内訳は、医科5,838件、歯科5,029件、薬局4,639件です。令和5年度の10,568件から約4,900件増加しており、個別指導と同様に増加傾向が見られます。

適時調査と監査の実施状況

適時調査と監査は、指導とは異なる目的で実施されます。適時調査は施設基準の充足状況を確認するもので、監査は不正または著しい不当が疑われる場合に事実関係を把握するものです。

適時調査は2,729件で、前年度から19件減少しました。そのうち医科が2,722件と大半を占めています。歯科は1件、薬局は6件でした。適時調査は施設基準を届け出ている保険医療機関等を対象とするため、医科に集中する傾向があります。

監査は34件で、前年度の46件から12件減少しました。科別の内訳は、医科20件、歯科14件、薬局0件です。監査対象となった保険医等の人数は83人(医師67人、歯科医師16人)でした。

取消処分の状況:歯科が全体の6割

令和6年度の指定取消処分(取消相当を含む)は23件で、前年度の21件から2件増加しました。このうち歯科が14件と全体の約61%を占めている点が特徴的です。医科は9件、薬局は0件でした。

取消処分の内訳は、指定取消が9件(医科3件、歯科6件)、指定取消相当が14件(医科6件、歯科8件)です。指定取消相当とは、本来取消処分を行うべき事案でありながら、既に廃止等の理由で行政処分を行えない場合の取り扱いです。取消処分と同様に、原則5年間は再指定を受けることができません。

保険医等の登録取消等は18人でした。このうち歯科医師が13人と最多で、医師は5人、薬剤師は0人です。保険医療機関等の取消と同様に、歯科領域の割合が高い状況となっています。

取消に至った端緒は、保険者・医療機関従事者・被保険者等からの情報提供が20件と大半を占めました。残りの3件は警察の摘発や個別指導等によるものです。不正の内容は、架空請求、付増請求、振替請求、二重請求、その他の請求など多岐にわたっています。

返還金額の状況:総額約48億5千万円

令和6年度に返還金額が確定した総額は、48億5,333万円でした。前年度の46億2,338万円から約2億3千万円増加しています。

返還金額の内訳は、指導による返還分が17億2,536万円(前年度比約3億7千万円増)、適時調査による返還分が22億9,921万円(前年度比約9億円減)、監査による返還分が8億2,876万円(前年度比約7億5千万円増)です。

この返還金額には留意点があります。返還金額は、指導・監査等の実施年度に関わらず、令和6年度に返還金額が確定したものを計上しています。そのため、指導・監査等の実施年度と返還金額の確定年度は必ずしも一致しません。

5年間の推移を見ると、令和2年度の約59億6千万円をピークに令和4年度には約19億7千万円まで減少しましたが、令和5年度に約46億2千万円、令和6年度に約48億5千万円と回復傾向にあります。

取消処分の主な事例

令和6年度に処分された事例のうち、特に注目すべき2件を紹介します。

医科の事例は、千葉県の医療法人社団 圭春会 小張総合病院です。同病院は、一般病棟入院基本料7対1の施設基準の届出において、病棟に勤務していない看護職員が病棟に勤務しているとする虚偽の届出を行っていました。情報提供を受けた関東信越厚生局が個別指導・適時調査を実施した結果、不正が確認されたため、計21日間の監査を経て、令和7年2月8日に指定取消相当となりました。返還金額は6億8,003万円にのぼります。

歯科の事例は、広島県のすみれ歯科クリニックです。同クリニックでは、通院していない月にもかかわらず診療報酬が請求されていた旨の情報提供が複数寄せられました。個別指導で、診療録に記載がないにもかかわらず診療報酬が請求されている事実が確認され、計9回の監査を経て、令和6年8月26日に指定取消相当および保険医の登録取消となりました。不正の内容は架空請求、付増請求、振替請求で、返還金額は1,411万3千円です。

まとめ

令和6年度の保険医療機関等の指導・監査等の実施状況には、3つの特徴がありました。個別指導の件数が前年度比約70%増の2,494件に達したこと、指定取消処分23件のうち歯科が14件と6割を占めたこと、返還金額の総額が約48億5千万円と前年度から増加したことです。保険診療の適正化に向けた指導・監査の動向は、医療機関の経営管理やコンプライアンス体制にも直結する重要なテーマです。今後も中央社会保険医療協議会での報告内容を注視していく必要があります。



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