大分県宇佐市出身の、伝説の力士がいます。
双葉山定次(ふたばやま・さだじ)。
今から、80年以上前の前人未到の大記録、69連勝は現在も破られていません。
しかも当時は、1年間に2場所。
あしかけ 3年以上かけた連勝は、大関でも関脇でもなく、前頭筆頭からのスタート。
そこから横綱になるまでの長い道のりの果てにありました。
双葉山は、現役当時、決して自ら語ることのなかった大きなハンデを二つ抱えていました。
ひとつは、幼い頃から右目がほとんど見えなかったこと。
もうひとつは、右手の小指の先を事故で失っていたこと。
双葉山は、そのハンデを憂い嘆くよりも、自分にしかできない相撲を模索し続けました。
そうして決めた流儀が、なるべく無駄な動きをやめようということでした。
無駄な動きは、相手に自分の思惑を知られるきっかけになる。
彼は決して、「待った」をかけませんでした。
さらに、彼が心がけた戦法は『後の先(ごのせん)』。
後の先と書くこの立ち合いは、まず、相手より一瞬、後に立つ。
でも、当たり合ったあとは、すばやく先をとっている、という戦い方です。
相手より後に立つことで、相手の動きが読めて、低く、いい角度でもぐりこめる。
ただ、そこからの素早さがないと、先がとれないリスクがあります。
右目が見えない分、少しでも長く相手の動きを察知したい。
そんな思いが生んだ、従来のセオリーを覆す立ち合い。
相撲ファンは驚嘆し、感動しました。
急がず騒がず、状況をじっくり見て、最短の道を進む。
そうして彼は、誰も成し遂げることができない偉業を達成したのです。
相撲界のレジェンド・双葉山定次が人生でつかんだ、明日へのyes!とは?