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コロナ禍を受け、再びベストセラーになった小説『ペスト』の作者、アルベール・カミュ。
今年、生誕110年を迎えます。
カミュの『ペスト』には、不条理な不幸にみまわれた人間の格闘と、未来への可能性が描かれています。
14世紀にヨーロッパで、黒い死の病と書く「黒死病」と呼ばれ、大流行した感染症、ペスト。
その勢いはすさまじく、わずか数年でヨーロッパ全土に拡がり、一説によれば、全人類総人口の3分の1が死滅したと言われています。
カミュは、このペストを、アルジェリアの港町、オランを舞台に書きました。
オランのおよそ20万人の住民は、とてつもない厳戒態勢のもと、一歩も外に出ることを許されず、家に閉じ込められます。
まさに我々が、コロナ禍で外部との接触を断たれたように。

この小説が書かれた当時は、この物語が、ナチス占領下のユダヤ人たちの生活を象徴していると考えられていました。
共通しているのは、理不尽で抗いがたい、不条理です。
人々は、苦悩し、嘆き、ただ、のたうちまわって、不条理の前にひれ伏します。
しかし、カミュは、この理不尽に真っ向から向き合う医者の姿を通して、人間の行動の可能性、人生に対する向き合い方を提示します。
カミュは、こんな言葉を残しています。

「希望というのは、一般的に信じられている事とは反対で、実は、あきらめにも等しいものなのです。
ただ、生きることは、あきらめないことです」

カミュは、自動車事故を恐れ、「自動車事故で亡くなるのだけは避けたい」と家族に話していましたが、1960年1月4日、午後1時45分。
友人が運転するクルマで、事故死。享年46歳。
ほんとうは、妻や子どもと共に、汽車でパリに帰る予定でした。

時代を予見し、傑作を世に出し続けたノーベル賞作家、アルベール・カミュが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?