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近代細菌学の父と言われる、フランスの科学者がいます。
ルイ・パスツール。
パスツールの功績は、はかりしれません。
牛乳やワイン、ビールなどが腐らないようにするため、低温で殺菌する方法を発見。
そのおかげで、私たちは今も安心して、牛乳やワインを飲むことができるのです。
彼の最も大きな偉業は、ワクチンという概念の構築と、予防接種の開発かもしれません。
ジェンナーの考えた天然痘を予防する種痘法に「ワクチン」という名前をつけ、ワクチンが他の病気にも応用できるのではないかと考えたのが、パスツールでした。
近代医療は、伝染病との戦いと言っても過言ではありません。
さまざまな伝染病に対抗するため、事前にワクチンを打って免疫をつくるという発想は、細菌学において、いわばコペルニクス的転回。
予防接種のおかげで救われた命は、全世界で今も増え続けていますが、それがパスツールの絶え間ない努力の賜物であることを知っているひとは、それほど多くはないかもしれません。

フランス、パリにあるパスツール研究所に、不思議な銅像があります。
犬に噛まれそうになっている少年の銅像。
少年の名は、ジュピーユ。
彼は、多くの仲間を助けるため、ひとりで狂犬に立ち向かいました。
奮闘のさなか、噛まれてしまいます。
狂犬病の犬に噛まれれば、命はありません。
でも、ジュピーユは助かった。
なぜなら、彼はパスツールが開発したワクチンを打っていたから…。
さらに、こんな話もあります。
フランスがナチス・ドイツに占拠されたとき。
パスツール研究所も没収されました。
守衛のジョゼフは、パスツールの墓を掘り起こそうとするナチスに鍵を渡すのを拒みました。命にかえて。
なぜならジョゼフは、9歳のときに狂犬に噛まれますが、ワクチンのおかげで助かったのです。
パスツールへの恩義は、一生をかけて守られたのでした。
近代細菌学の扉を開いたパスツールは、聖人君主、生まれながらの天才、だったのでしょうか。
ひとつでも多くの命を救いたいと願い続けたレジェンド、ルイ・パスツールが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?