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今から70年前に、ノーベル平和賞を受賞した、「密林の聖者」がいます。
アルベルト・シュバイツァー。
彼が受賞した部門が、なぜ医学・生理学賞ではなく、平和賞だったのか。
40年にわたる、アフリカ、ガボンでの献身的な医療活動が評価されての賞だと、誰もが思いました。
しかし、彼の90年の生涯を知れば、平和賞こそが最もふさわしい賞であることがわかります。

『生命への畏敬』。
それは、シュバイツァーが一生を捧げて全世界に伝道した哲学です。
この世の生命は、全て、生きようとしている。
自己を実現したいという意志を持っている。
それは、どんなことよりも優先されるべきものであり、畏れと尊敬を持って、他人の命は尊重しなくてはならない。
彼は戦争を心から憎み、排除したいと願いながら、世界中で講演や演奏活動を行い、アフリカの密林で多くの患者と向き合ったのです。
彼が医学部に学んだのは、30歳のときです。
すでに名門シュトラスブルク大学の神学科の講師の職を得ており、学長は驚きました。
「シュバイツァー君、君はもうすぐ神学科の教授になろうという人間だ。
なぜ、今更、医師の資格を得たいと思うのかね?」
シュバイツァーは、学長にこう答えました。
「満足な医療を受けられずに目の前で亡くなっていく人を見たら、なんとしても救いたい、そう思うのは自然なことではないでしょうか。
私は21歳の時、決めたのです。
30歳までは、学門と芸術を身につけよう。
そして30歳からは、ひとのために尽くそう。
私の理想の実現に、医学が必要なのです」
二度の世界大戦を経験し、一時は捕虜収容所にとらえられても、己の理想を手放さなかった賢人、アルベルト・シュバイツァーが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?