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Description

フィンランドが生んだ、建築家のレジェンドがいます。
アルヴァ・アアルト。
彼の名前は知らなくても、彼がデザインした、北欧食器の有名ブランド、イッタラのフラワーベースやキャンドルスタンドは見たことがあるかもしれません。
流れるような曲線は、フィンランドの森の中の湖、かすかな波、あるいは、白樺の切り口をイメージしたもの、と言われています。
また、発売90周年を迎えるスツール界の王様、アルテックの「スツール60」も、アアルトのデザインです。
誰もがどんなシチュエーションでも使えるシンプルで普遍的な椅子は、今も世界中のひとに愛されています。
そのデザインが、優しく、温かみに満ちているように、彼が手掛けた建築も、自然との融和をイチバンに考えた、環境にも暮らしぶりにも優しい設計が、最大の特徴です。
生誕125年の今年、彼のドキュメンタリー映画が公開されました。
その名も『アアルト』。
彼と同じく建築家だった妻、アイノとの創作の歴史が描かれています。
同じく映画になった建築家のレジェンド「ル・コルビュジエ」との最大の違いは、女性とのスタンスの取り方かもしれません。
男性社会の建築家の象徴、コルビュジエに対し、アアルトは、妻への深い尊敬と愛情で、共作を続けました。
創作のスタイルも、画家にたとえれば、コルビュジエはエネルギッシュで活動的なパブロ・ピカソ。
アアルトは、ひとつのモチーフに優しく向き合い続けるアンリ・マティスと言えるかもしれません。
そこには、彼の故郷がフィンランドであることも大きく起因していると思われます。
彼が生まれた1898年という年は、フィンランドがロシア帝国から独立するために紛糾していた過渡期でした。
シベリウスは、名曲『フィンランディア』を、その翌年に作曲しています。
緊張と移り行く時代の中に生まれたアアルトには、激しさや暴力こそ、最も嫌悪すべきものであり、融和、調和、平和こそが、彼の祈りにも似た願い、だったのです。
建築に優しさを刻印した世界的な巨匠、アルヴァ・アアルトが人生でつかんだ、明日へのyes!とは?