私が会った子どもたちは、
みんな可愛かった。
笑っている子ども、
ふざけている子ども、
赤ちゃんを、おんぶした女の子、
さかだちを
自慢そうに見せてくれた男の子、
いっしょにうたった子ども、
どこまでも、ついてきた子ども。
いろんな子どもたちに、会った。
そして
両親や姉兄を目の前で殺された子ども、
ゲリラに腕や足を切り取られた子ども、
親が蒸発し、
小さい弟や妹を残された女の子、
親友だった家畜が、飢えて死んでしまい
ぼう然としていた男の子、
家も学校も、すべて
破壊されてしまった子ども、
難民キャンプを、
たらいまわしにされている孤児たち、
家族を養うために売春する子ども。
だけど、だけど、
そんな、ひどい状況のなかで、
自殺をした子どもは、一人もいない、
と聞いた。
希望も何もない難民キャンプでも
一人も、いない、と。
私は、ほうぼうで聞いて歩いた。
「自殺をした子は、いませんか?」
「一人も、いないのです。」
私は、骨が見えるくらい痩せて
骸骨のようになりながらも、
一生懸命に歩いている子を見ながら
一人で泣いた。
『日本では、子どもが、自殺してるんです。』
大きい声で叫びたかった。
こんな悲しいことが、あるでしょうか。
豊かさとは、なんなの?
私がいろんな子どもに会って
日本の子どもに伝えたかったこと。
それは、もし、この本の中に出てきた
発展途上国の子どもたちを、
「可哀想」と思うなら、
「助けてあげたい」と思うなら、
いま、あなたの隣にいる友達と
「いっしょにやっていこうよ」と話して。
「みんなで、いっしょに生きていこう」
と、手をつないで。
私の小学校、トットちゃんの学校には
体の不自由な子が何人もいた。
私のいちばんの仲良しは
ポリオ(小児マヒ)の男の子だった。
校長先生は、一度もそういう子どもたちを
「助けてあげなさい」とか
「手をかしてあげなさい。」とか、
いわなかった。
いつも、いったことは、
「みんないっしょだよ。
いっしょにやるんだよ。」
それだけだった。
だから私たちは、
なんでもいっしょにやった。
誰だって友だちがほしい。
肩を組んでいっしょに笑いたい。
飢えてる子どもだって、
日本の子どもと友だちになりたい、
と思ってるんですから。
これが、みなさんに、
私が伝えたかったことです。
(黒柳 徹子
「トットちゃんとトットちゃんたち」)
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